新しく始まった児童発達のレッスンが落ち着き順調 になってきた7月から
新たにレッスン教室を1部屋増やすよう準備をしていた時、
子どもと向き合って過ごす一番大切な机が特別な大きさ、形のため、間に合わないということになり
どうしよう… と考えていたスタッフ達。
そんな時、私の頭にすぐ浮かんできたのが、
保育士であるが、とても手先が器用で職人顔負けなくらい大工仕事が得意な後輩のR先生だった。
彼のものづくりをずっと観てきた私は、
彼の緻密な計画と、採寸、段取り、材料の調達、そして細やか、かつ丁寧な手仕事に驚かされていた。
子ども達との日々の遊びや、生活する中でこんな所にこんなものがあったらいいなあ…
こんなことをしてみたいからこんなものが欲しいなあ… と
思い願うものを実際に作り出してくれることのできる
魔法のような手の持ち主である。
R 先生は子ども達も実際に木工を体験できるよう、
つくる前にまず身につけておきたい心構えや約束を子ども達と丁寧に話し合ったり伝えたりして、
ものづくりの楽しさばかりでなく危険、難しさ、自分との葛藤を木工を通して子ども達に体験させる保育をしていた。
どうしてR先生がこんな綺麗な丁寧な技術を身につけることができたのだろう?と
私はすぐに興味が湧き聞いてみたことがある。
お祖父様が大工さんだったとのこと。
だから小さい頃からお祖父様の仕事を側で見て真似しながら遊び、
お手伝いをしていたのだろうと勝手に想像したが、
実際は違っていた。
お祖父様は気骨な職人だったのだろう。
小さいR君に大工道具や材料など決して触らせてはくれなかったとのこと。
見ていただけで覚えたの?
観ていただけなのに身に付いたの?
こんなことができるようになるの?
とますます私は驚いた。
子どもの『観る力』というものは、大人の『観る』をはるかに越えている。
視点がまず違うのではないかと思う。
さらに全てが興味津々なので、身体、目、頭への刷り込み、そして量も全然違うのだと思う。
児童発達支援の研修を受け始めたばかりの頃、
ミラーニューロン効果ということを習った。
ミラーニューロン効果とは、
人は新しいことを身につける時に人の動きや感情を自分の ‘脳の鏡‘ に映し出して、
まるで自分が実際にやっているかのように脳の中で体験し学んでいくことをいう。
「見るだけで真似して覚えてしまう」子どものすごい可能性の力である。
そしてR先生のことを思い出した。
実際に何も触って経験していないのに、
お祖父様の動きや様子、話していること、感情一つ一つがミラーニューロン現象となり、
現在のR先生をつくりあげていたのである。
本当に凄いことだと思う。
私の息子は乳児の頃はまだなかなか歩くことができず、
みんなとは動きが違うため人の動きややっていることをじっと観ていることが多い子だった。
あまりにもよく見ているので ‘見る力‘ のある子だとなんとなく感じていた。
しかしその頃はそれがどんなに大切なことなのかは知らずにいた。
なのでこのミラーニューロン効果について聞いた時、まさしく息子はこれだった❗️と思った。
見ることによって、他の人がどうやって歩いているのか、ボールを蹴るにはどうやったらいいのか…
などを一つ一つ獲得しようとしていたのだと思う。
乳幼児の頃に「うちの子何もしないで見ているだけなの… 」
と悩む親もたくさんいるが、
『観る』ことがまず基本なのである。
観てたくさんインプットしたことは、
決して無駄にはならず、その子の財産となっていくだろうとR先生を見て確信した。
だからR先生が造り出すものには、技術、丁寧さだけでなく心がこもっているのだ。
これはお金では買うことのできない、唯一無二のぬくもりだと思う。
私が新たに始めた児童発達支援には親、 兄弟、幼稚園や保育園の先生、
支援施設の指導員、地域の方他、いろいろなぬくもりが絶対に必要である。
そのぬくもりに守られて、支えられて子どもたちが少しでもよりよく生きて行けるように、
良さを認めて伸ばしてあげられるように私も頑張っていきたい。
R先生の机のぬくもりを、きっと子ども達は肌で感じてくれると信じている。
注文図
完成